信頼残高を増やすために大切なこと
人間関係のバロメーターとして
『信頼残高』という考え方があります。
アメリカのスティーブン・R・コヴィー博士によって書かれ
1989年に発刊された『7つの習慣』に書かれているもので
信頼関係の程度を銀行口座の残高にたとえたものです。
私たちは自分名義の信頼口座を開設しています。
100人と付き合っていれば、100の信頼口座があります。
信頼口座の取引明細は、「自分が相手に言ったこと」「行ったこと」です。
信頼を得ることをすれば預け入れ(プラス)となり、信頼を損なうことをすれば引き出し(マイナス)となります。
礼儀正しい行動、親切、正直、約束を守るなどの行動を通して信頼残高をつくっていけば、そこに蓄えができます。
銀行口座に利子がつくように、信頼が信頼を呼ぶこともあります。
少しぐらいの失敗なら、それまでの高い信頼関係から簡単に許してくれるでしょうし、逆に励ましてくれたり、プラスに作用したりする場合もあるでしょう。
しかし、それがあまりにも度重なると、信頼残高がどんどん減ってしまい、最終的にはマイナスになってしまいます。
つまり信頼関係がない状態になってしまうのです。
信頼残高を増やす6つの預け入れ
「7つの習慣」では、信頼残高を増やすための方法として、6つの方法を紹介しています。
1つ目は「相手を理解すること」。
これは最も重要な預け入れの1つで、すべての預け入れの基礎になります。相手を理解してからでなければ、その人にとって何が預け入れになるかわからないからです。
私たちは、よく「よかれと思ってやったのに……」という苦い思いをすることがあります。「食事に誘う」「仕事をお願いする、またはやってあげる」「スポーツに誘う」「サークルに勧誘する」など、相手が喜ぶと思っていろいろなことを他者に働きかけますが、相手によっては、全く効果がないどころか、逆効果になることもあります。
また、ある人にとっては一大事でも、他人にとっては些細なことというケースもよくあります。本当の預け入れをするためには、「相手のことを大切に思うのであれば、相手にとって大切なことを、自分も大切に思う必要がある」のです。つまり、相手の関心事にあなたも関心を持つということです。自分が大切に思っていることにあなたも興味を抱いてくれると感じれば、あなたに対する相手の信頼感はぐっと高まることでしょう。
2つ目は「小さなことを大切にすること」です。
小さな心遣いや礼儀、親切はとても大切なことです。逆に、小さな無礼や不親切、無神経は、信頼口座からの大きな引き出しになりますから注意しましょう。
人間関係において、小さなことは大きなことなのです。
「席を譲る」「先にドアを開ける」「自分から先によける」「目が合ったら微笑む」「ていねいに挨拶する」「きちんとお礼を述べる」「飲み物を渡してあげる」……私たちの生活や仕事において、小さな親切をするチャンスはいくらでもあります。
常にそういった気持ちを忘れずにいるならば、すぐに行動に表すことができるでしょう。
3つ目は「約束を守ること」です。
当たり前のことですが、約束を守るのと守らないのでは、信頼残高に与える影響が大違いです。
約束を守らなくてもいいと思っている人はほとんどいないでしょうが、有能な人であればあるほど、自分の能力を発揮するチャンス、あるいは学習のチャンスだと考えて、あらゆる機会を捉えて約束をしてしまいがちです。また、優しい気持ちを持っている人は、他の人の役に立ちたい一心で、無理な約束をしてしまう傾向があります。
しかし、その約束が守られなかったとき、相手との信頼関係のレベルは、以前よりも低いものになってしまいます。大きな預け入れをしようと思って約束したにもかかわらず、結果が伴わないばかりに関係にヒビが入ってしまうとしたら、これほど不幸なことはありません。
4つ目は「期待を明確にすること」です。
お互いに期待していることがハッキリわからないまま仕事を進めてしまうのは、よくあることです。そして結果として、「やっぱりダメだ」と評価されてしまうことも少なくありません。
仕事はもちろんのこと、人間関係におけるほとんどの問題は、役割と目標を取り巻く曖昧な期待、期待するイメージのスレに原因があります。誰が、いつ、どこで、どんな仕事を、どのように、どこまで、誰とやるのか、といった期待像が不明なばかりに、後で誤解を生むことになってしまうのです。
5つ目は「誠実さを示すこと」です。
誠実という意味を表す英単語は数多くありますが、ここで注目したいのが「Integrity」という表現です。これは「整数」という意味の「Integral」と同語源の言葉で、言動に一貫性がある、裏表がなく誠実であるという意味です。
口では「君も家族のことを考えてプライベートを大切にするように」などといいながら、毎日残業を強いるような人を信頼することはできません。また、「お客様に貢献することが第一だ」といいながら、実際には品質など二の次でコストダウンを優先する企業は、やがてその意図を見抜かれ、市場からの信頼を失うことでしょう。
6つ目は「信頼残高を引き出してしまったときは、誠意をもって謝ること」です。
自分の過ちに気づいたとき、直ちに心から謝ることは、人格のパワーを必要とする行為です。謝ろうと頭では考えても、謝ったことで「弱みにつけこまれないか」「悪用されはしないか」「ダメなヤツだとレッテルを貼られはしないか」などと不安になり、誠心誠意謝ることができない場合が多々あります。
判断を誤ったための間違いや、単なる勘違いについては、すぐに謝りさえすれば、大概の人は許してくれるものです。しかし、心のあり方から犯した間違いは簡単に許してはくれません。特に、不正な動機による過ちは信頼関係をゼロにしてしまいます。
信頼残高という考え方の素晴らしいところは、どんな問題に直面していても、それを預け入れのチャンスにできる、というところです。
誰かの機嫌が悪ければ笑わせるチャンス、誰かを傷つけてしまったら、自分にとっては謝罪のチャンスであり、相手にとっては許すチャンスとなります。誰かが誰かの悪口をいっていたら、その場にいない人に対して誠実になるチャンス、またその人を弁護するチャンスです。つまり、常に信頼口座を心の中にイメージしていれば、さまざまな出来事が信頼を築くチャンスにすることができるのです。
参照:第四の習慣 Win-Winを考える 信頼残高を増やす6つの預け入れ
人間関係を豊かにするためには
「相手が何を望んでいるのか」
「どうしたら相手の為になるのか」
を思考の中心に据えて
考え行動することが大切だと思います。
信頼を得るには時間がかかるのに、
信頼を失うのは一瞬ですからね。
自戒の意をこめて書いています。